サムライ放談30・・いで湯の紅葉

CIMG1216-1先日、滋賀県から北陸道周りである依頼人の男性が当事務所に来訪した。依頼人の父親が平成22年に交通事故に遭い25年3月に鑑定書を提出したが現在も裁判中である。今回、鑑定依頼人がわざわざ会津まで出向いた理由は当事務所の数多い蔵書から裁判に役立つ書籍を見るためであり参考になる書籍を見つけたようである。また、この男性依頼人が住んでいる地域(市)では過去に鑑定依頼した者が他に2名おり懇談会的な集まりもあったようである。
滋賀から車で紅葉の時期に来られたので、地元の者にもあまり知られていない「紅葉の絶景地」に案内し、麓の「いで湯」で共に酒をいただいた。

乗用車と歩行者の接触事故

平成26年に新潟市で発生した事故では横断歩道を渡ろうとした少年がたまたま通過中の乗用車に接触したとされる事故で、運転者は接触などに気づかずにそのまま走行したらひき逃げとして逮捕され拘留された。この事故の論点は警察が当該車両の側面からシリコンラバーで採取したとする形の間隔と少年が着用していたジャンパーの布目間隔が一致するとの鑑識鑑定が示された。そこで、現実に衝突が成り立つかを調べた鑑定を求められたことから少年が着用していたジャンパーと同じものを入手して電子顕微鏡で拡大した文様と一般的なジャンパー4着を同率拡大で対比するとほぼ同じ文様であることが明らかとなり、シリコンラバーで採取したとする形が布目痕としても少年が着用していたジャンパーにより付けられたとする「固有の整合性」は全くないことが判明した。また、警察が示した接触状態ならば少年の頭部が左サイドミラーに衝突して負傷することからその負傷が存在しない結果少年と乗用車は接触していないとの結論を示した。

バイクと中型トラックの事故衝突

平成25年愛知県碧南市で発生した事故は交差点内で中型トラックに原付バイクが転倒して衝突した事故とされたが、損傷したバイクが保存されており痕跡の生成状態を詳しく調べるとバイクは転倒して衝突しておらず、向かってくる中型トラックを回避するような逆向きとなった状態時に衝突を受けたことを結論として示した。

交差点信号の特定

平成25年に東京都稲城市で発生した事故は、交差点先で駐車中の軽自動車が発進したときに後方から乗用車が衝突した。この事故では衝突状態の解明よりも事故地より数十メートル手前に信号交差点があり、衝突した乗用車が通過した時の信号に注目して信号種別を解明した。解明の方法は軽自動車の運転者が衝突時刻より数分前のレシートを持っておりそれに所要時間を加えることで衝突時刻が判明し、その時刻から信号位置まで遡及すると乗用車は赤信号で通過したことが明らかとなり、信号待ちで停車するならば事故は発生していないと結論を示した。

ゴルフカーから転落事故

平成23年千葉県のあるゴルフ場でゴルフカーが左へ旋回中に後部に乗車していた女性が転落した事故が発生した。転落要因を解明するために同じ転回場とゴルフカーで再現実験を繰り返した結果、運転者の高速発進による遠心力で振り落とされたことが明らかとなり結論を示した。

人体落下の労災事故鑑定

平成23年に山口県岩国市で大型トラックの上部から従業員がトラックスケールの鉄板面への転落事故が発生した。この従業員の雇用企業から調査および再現実験の依頼を受けて実地した結果、負傷したと申告する従業員の事故状態ならば即死もしくは重症を負う衝撃力を受けることが明らかとなり、従業員の軽傷状態に照らし合わせ偽装事故との結論を示した。

商業ビル地下への階段で転倒した事故を鑑定

平成23年福岡市天神のある商業ビルで、一階フロアーから地下への階段を下り始めた時に転落事故が発生した。この事故は雨天時に傘を差した老人が一階フロアーから地下へ転倒し負傷したのであるが、転倒要因を解明すると外側からフロアーに入るドアが内開きでありその開きで踊り場が約47%占有されて、さらにドアに開きロックがないために戻りを手で押さえる状態を押し入られたことでバランスを失い階下へ転倒したと結論を示した。

田園地の十字交差点での衝突事故鑑定

平成22年滋賀県高島市で発生した交通事故は、双方とも見通しが良い十字交差点で相対90度で軽トラックと乗用車が衝突し軽トラックの運転者が負傷した。この事故の論点は双方車両の衝突速度でありとりわけ乗用車の速度が注目された。鑑定では軽自動車の衝突後の回転動きと停車方向から乗用車の速度は約85km/hと結論を示した。

サムライ放談29・・車輌火災鑑定の立場から

 95年に大阪市東住吉区の民家火災で当時小6の女児が焼死した事件が発生し、殺人罪などに問われた母親と内縁の夫に対して、大阪高裁は10月23日に再審開始を認めその後両名は釈放された。
 私はこの事件を詳細に承知しておらず今回の報道で知るに至ったが、争点となった火災の原因を再現実験したことは客観性の高い証拠であり、発火性が極めて高いガソリンが気化した場合には遠火要因でも引火状態が起こりえる。現に私が鑑定した事故でも満タンにした乗用車が燃料口を橋の欄干で軽微な擦過しただけで引火して車両火災が発生した事例がある。また、整備中に使用したウエスをエンジン脇に残したがために加熱したマフラーに落ち込んで車両火災が生じた事例もあるが、車両が火災に至るには多種の自然発火要素があり、多面的な見方が必要である。
 この事件は車庫に入れた軽自動車の燃料が満タンであったことに加えて、車庫内の密閉空間でガソリンが気化したことが自然発火の要因となった。この程度のことは捜査関係者でも容易に想定できたと言える。
 そもそも、放火と言える客観的な証拠がないまま自白に偏重した結果であり、またも刑事捜査の不備もしくは脆弱性が現れたと指摘し、車輌火災鑑定の専門家としても再審開始は妥当であると思料する。