先般、九州のある地方裁判所で驚くべき判決が示された。この裁判の交通事故は、バイクと軽ワゴン車がカーブ道路で対面衝突した事故であり、ライダーは死亡し、大量の血痕はバイク側車線上に残されその上にバイクは横倒しとなっていた。このような状態は現場写真で確認できるのである。 
 裁判の判決文では、実況見分調書に添付された現場見取図だけをもとに衝突地点は軽ワゴン車側の車線上と判断している。よって、この裁判官の判断は、客観的事実である現場写真や車輌写真を具体的に取り上げて判断したのではなく、人間が手書きで描いた見取図面を優先したのである。
 そこで、「写真」と「人間が手書きで描いた見取図面」の客観性を対比すると、このような現場写真を改ざんすることは先ずあり得ないが、見取図面は担当した警察官が手書きで描いたものであり、事故を説明した者の供述に迎合する描写および主観的かつ恣意的な描写も完全に否定できない。このことから、事故での車輌写真や現場写真は手書き図面よりもはるかに客観性があり証拠性もある。  以上のことは、常識的なことであるが、この裁判官が見取図面だけをより所として衝突地点を軽ワゴン車側車線と判断したことは、「警察官が書いた図面だから間違いがない」との確証バイアス(個人の先入観に基づいて他者を観察し、都合の良い情報や好感をもてる情報だけに注目し集める。それにより自己の先入観を補強するような錯誤の思考)に陥り、最も客観的な現場写真や車輌写真を取り入れていない。一般的な市民感情ならば、無条件に警察の交通捜査を評価することはあり得るが、しかし、裁く立場の者ならば、客観性が疑われる現場図面だけを無条件で取り入れるのではなく、すべてを「ゼロの視点」で観て客観的な事実にもとづく判断が求められることは当然である。 
 それにしても、バイクの転倒地およびライダーの大量血痕地はライダー車線側であるが、軽ワゴン車線側での衝突であると判断されたことに大きな矛盾が残される。この裁判官はそれを無視して何ら応えていない。