私は先般、「脳脊髄液減少症患者の集い」に参加する機会を得た。参加された患者さんは「頭痛、頚部痛、めまい、倦怠、不眠、記憶障害」などの症状を訴えて、そのほとんどが交通事故での受傷が基ではないか、それ以外に人体に相当する衝撃を受けた事象は見あたらないとの声が多かった。
 このような脳脊髄液減少症を含めた軽度外傷性脳損傷や高次脳機能障害が、交通事故、スポーツ外傷、転落転倒傷害により人体への衝撃で発症することが近年わずかながら知られてきた。ひと昔前では「むち打ち症」などと曖昧な受傷名で片付けられて受傷の根本要因(受けた撃力)などは何ら注目されない状態であったが、今日では受傷名に変化があったにしても医学者が根本要因まで理解して診断しているかは疑問である。これは交通事故などで受けた撃力と牽連する医学の研究(交通医学)の分野が構築されていない結果である。 
 時には、「脳脊髄液減少症・軽度外傷性脳損傷・高次脳機能障害」などを交通事故が原因か否か、の裁判で医学関連の証書だけで裁判官に判断を求めているが、これは偏重的であり「その人間が受けた衝撃力」を論点としなければ本質的な受傷が見えてこないのである。そのためには、人体の衝撃(力学)などの工学分野と医学分野が融合した「交通医学」の研究を国が率先して行なうべきである。