95年に大阪市東住吉区の民家火災で当時小6の女児が焼死した事件が発生し、殺人罪などに問われた母親と内縁の夫に対して、大阪高裁は10月23日に再審開始を認めその後両名は釈放された。
 私はこの事件を詳細に承知しておらず今回の報道で知るに至ったが、争点となった火災の原因を再現実験したことは客観性の高い証拠であり、発火性が極めて高いガソリンが気化した場合には遠火要因でも引火状態が起こりえる。現に私が鑑定した事故でも満タンにした乗用車が燃料口を橋の欄干で軽微な擦過しただけで引火して車両火災が発生した事例がある。また、整備中に使用したウエスをエンジン脇に残したがために加熱したマフラーに落ち込んで車両火災が生じた事例もあるが、車両が火災に至るには多種の自然発火要素があり、多面的な見方が必要である。
 この事件は車庫に入れた軽自動車の燃料が満タンであったことに加えて、車庫内の密閉空間でガソリンが気化したことが自然発火の要因となった。この程度のことは捜査関係者でも容易に想定できたと言える。
 そもそも、放火と言える客観的な証拠がないまま自白に偏重した結果であり、またも刑事捜査の不備もしくは脆弱性が現れたと指摘し、車輌火災鑑定の専門家としても再審開始は妥当であると思料する。